去年、母が死んだ。⑤
2013年に兄が膀胱がんで亡くなった時は
兄が夢枕に立った。
ぬぼーっと、そこに生きてるがごとく立って私を見下ろしていた。
顔は、だいぶ無表情だった。いつも通りっちゃいつも通りだけど。
だから、母親も立つと思ってた。
だってほら、魂レベルで信頼しているし、仲良かったし。
いやけど、全然来ない。
え、嘘、荷物まとめて綺麗サッパリあの世へ旅立ったの?
夢は見るけど、たぶんあれは私の記憶が作り出した母親であって、なんか違う。
兄が夢枕に立ったような、リアル感は全くない。
いやしかし、兄と母を亡くして、こんなバカな私でも
やっと死がなんなのか、死ぬとはどういう事なのか、なんか
輪郭くらいは掴めてきた感じがする。
それが死生観を持つという事に繋がるのか?
母親を亡くしてからずっと
死の余韻が消えない。
社会復帰は出来ているし、元気に仕事もしているし、遊ぶ時は遊んでいるけど
寝る前にはいつも思い出す。
思い出すのは緩和ケア病棟での事が多い。
私の新しく買ったパーカーを見て、可愛いねと微笑んだ。
最後の見送り方はあれでよかったのか。
2日間寝ずに付き添っていたら
最後の最後はもう早く死んでくれと 早く楽になってくれと思っていた。
死後、こんだけ辛いことをあの時わかっていれば
最後の見送り方をもっともっと丁寧にできたんじゃないか。
まあ母親はそんな事は気にしないだろうけど。
傍に居てくれただけで充分だって、言ってくれるだろうけど。